コラム

宮古から心の復興を

2016年03月08日

震災直後の5月初め、岩手県内の演劇、音楽、美術などの文化芸術活動のリーダーたちが当法人の部屋に集まり、文化による支援活動について話し合いました。東京から平田オリザさんら文化支援に熱意を持つ関係者の方々も駆けつけてくれました。想像を絶する被害の大きさに、文化芸術の非力さを感じつつ、被災された方々の心の癒し以外に文化芸術が果たす役割はなんだろうと、数名の有志は翌日まで話し続けました。

「文化支援は子どもたちに向けられるべきだ」「宮古・山田地区でピアノが百台近く流されている」「宮古、釜石、陸前高田の文化会館は使用不能、大船渡も避難所になりしばらく機能しないだろう」「無料の支援公演に慣れすぎると、将来、有料公演に行かなくなるだろう」「岩手の表現者や舞台会社は二次被害を受けている」「避難所で喜ばれる表現はなんだろう」等々、熱気あふれる話し合いでした。

その後、集まったメンバーはそれぞれの支援活動を始めました。当法人も「いわて文化支援ネットワーク」事業を始め、首都圏からの文化支援のコーディネート活動、資金調達による楽器支援、祭り芸能支援、アーティスト派遣などの活動を展開してまいりました。

あれから5年。

文化芸術を取り巻く施設面での環境は次第に整備されつつありますが、懸念が現実化している問題もあります。

昨年度の当法人の調査では、課題として挙げられたものは「指導者と後継者不足」「活動資金の不足」で、必要度が高いとものとして「子どもの文化芸術体験の充実」「内陸等との交流の充実」でした。そして有料イベントの低迷が5年前の懸念の通り現実化していました。

縁あって、昨年度から当法人が宮古市民文化会館の指定管理業務を担っています。宮古市民文化会館は、震災で津波の被害を受けた文化会館としては、全国で初めて復活させた施設です。県内では、釜石市の文化会館が本年度着工し、陸前高田は設計を出来上がっていません。生まれ変わった文化会館がどんな事業運営をするのだろうと注目され、私たちに課せられた責任はとても重いと実感しています。

当法人には、文化施設の運営経験の豊かな会員・職員がおります。県内外のアーティストとも浅からぬネットワークも持っています。これまでの文化支援活動の経験も活かされると思っています。

この一年間余りは、再開したホール運営の軌道の円滑化のために多くの時間を割いてまいりましたが、平成28年度からは、いよいよ本格的に「文化芸術による心の復興」事業を展開してまいりたいと思います。充実した鑑賞事業の実施は勿論ですが、子どもの文化芸術体験の充実、市民参加型の舞台づくり、ホール運営へのサポーター育成などを行い「市民協働」のホール運営に近づけていきたいと考えています。

2016年3月8日

特定非営利活動法人いわてアートサポートセンター
理事長  坂田 裕一